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26日に独連邦議会選 左翼政権の可能性も

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社民党が第一党か、CDU、緑の党の党首不人気で

公開日: 2021/09/13 (ワールド)

ドイツ連邦議会=ccby Andreas Praefcke ドイツ連邦議会=ccby Andreas Praefcke

俵 一郎 (国際金融専門家)

 ドイツでは9月26日に連邦議会選挙が行われる。16年の長きに亘ってドイツならびにEUで主導権を発揮したメルケル首相が引退を表明しているため、同時に後継首相も決める選挙となる。目下のところ、キリスト教民主同盟(CDU)が16年ぶりに政権を失い、社民党が久しぶりに政権の座に返り咲くとの予想が多い。

 メルケル首相が党首を務めてきたキリスト教民主同盟(CDU)は戦後ドイツの歴史で70年のうち50年もの間、政権の座にあった。戦後の経済復興を果たしたアデナウアー首相、エアハルト首相のほか、東西ドイツの統合を果たしたコール首相、その弟子ともいえるメルケル首相らを輩出してきた。なお、ドイツにおいては選挙後の連立政権樹立に時間を要する(前回は171日)ため、14年間のアデナウアー首相を抜き去っているメルケル首相の在任日数はコール首相も上回り史上最長となる公算が高い。

 メルケル後継として3人の有力候補がいるが、最有力のショルツ財務相ほか、いずれもメルケル首相ほどの声望もなく、とくにCDUのラシェット党首と緑の党のベアーボック共同党首はメディアからの厳しい批判を浴びている。

 ドイツの最近の世論調査をみると、キリスト教民主・社会同盟、CDU/CSU (CSUはCDUと長年一体となってきた姉妹政党でバーバリア州の地域政党)の支持率が20%と前回比7%も急落した。CDU/CSUと8年間、大連立を組んできた社会民主党(SPD)が支持率25%とCDU/CSUを抜いてトップに立った。次いで緑の党が16%、自由民主党が13%、極右政党である「ドイツのための選択肢(AfD)」が12%、東独共産党を母体とする左翼党(Die Linke)が6%となっている。

 CDU/CSUにとって頭が痛い問題は、メルケル後継となるラシェット党首の不人気であることだ。ラシェット氏はノルトライン=ヴェストファーレン州知事を務め、メルケル後継とみられていたカレンバウアー党首の辞任に伴い、2021年1月より党首を務めている。

 しかし、7月にドイツを襲った大洪水の被害を視察時に同僚と満身の笑みを浮かべていたのが不謹慎だ、と支持率低下につながったと言われる。選挙演説で同僚のCDU議員の名前を間違って連呼したというお粗末さも減点材料だ。多くのCDU候補からラシェット党首と一緒に写っているポスターを張るのは拒否されているようだ。

 いまや「ラシェット氏はCDUの資産でなく負債だ」とまで悪口雑言を浴びている。こうなるくらいであれば、一時、首相候補に名乗りを上げたCSUのゼーダー党首、バイエルン州知事を首相候補にしておけばよかったとの声がCDU党員の7割くらいに達しているようだ。

 ゼーダー氏はコロナ感染が拡大している時期にリーダシップを見せていた。これに対して元々、ラシェット氏は地味ではあるが、メルケル首相と同じ中道穏健派であるためメルケル後継にはふさわしいと推された経緯がある。

 ラシェット氏を擁護するわけではないが、上記のような不始末に加えて本質的にはそもそも16年続いたメルケル路線をさらに4年間も続けることに国民の間で飽きが来ていたという側面はあろう。

 元々、メルケル首相は、リーマンショック、ギリシャ離脱の恐れまであったユーロ危機、最近ではコロナ感染の拡大と内外の危機にあって主導力を発揮してきた。ドイツ経済も失業率で見て在任中に10%から3.5%まで大幅に改善させた。

 一方で、メルケル首相はロシアとのガスパイプラインであるノルドストリームⅡに合意(2021年7月)したほか、EUと中国との間の包括的投資協定(2020年12月)を主導するなど、一貫して中国への傾斜を選択してきた。米国バイデン政権が誕生して中ロと西欧諸国の間で「民主主義対専制主義」と呼ばれる対決の時代にあってメルケル首相の指導力にもそろそろ限界が来た、とのうがった見方もある。調整型の名手ではあるが、高邁な政治理念を持って率先して明快な問題解決をおこなって国民をうならせてきたわけでもない。16年の在任は余りにも長すぎたという側面もある。

 代わって首相最有力候補に躍り出たのが大連立政権下の副首相兼財務相であるショルツ氏である。首相候補としての支持率は30%とラシェット氏の11%や緑の党のベアーボック共同党首の15%を大きく引き離している。ショルツの支持理由には安定性、信頼性が挙げられているほか、ショルツ氏自身、大連立のサブパートナーとしてメルケル首相の後継にふさわしいと述べている。ただ財務相としてデジタル決済会社ワイヤーカードの粉飾、ドイツ銀行なども関与した株式配当の課税逃れの動きなどを見抜けなかったことが批判されている。また2019年の党首選で敗退した政治力不足などがたびたび問題として浮上してくる。

 SPDはCDU/CSUとともにドイツで歴代政権を担ってきた。かつてブラント、シュミット、シュレーダーなどの有能な首相を生んでいる。元々は社会主義政権であるが、いまは中道左派に位置付けられている。いまの公約は12ユーロ/時間の最低賃金を実現させることや一般国民のための住宅安定供給や年金支給の安定をうたっている。

 ただSPDに対する支持率が25%とあっては他党との連立政権を模索する以外に政権は奪取できない。一方でSPDは長年のCDU/CSUとの大連立で独自色を失った反省から再度CDU/CSUとの大連立を組む考え方には距離を置いている。いまのところ、SPD、緑の党、自由民主党で過半数を占める構想と言われる。SPDと緑の党との間では富裕税の導入や公共投資の拡大で主張は共通している。しかし、自由民主党はプロ経済界であり法人税引き下げ、均衡財政を掲げているだけに連立は容易でない。となると、自由民主党でなく、禁手ともみられる左翼党を巻き込んだ左派連立が浮かび上がってくる。

 メルケル首相は自分の内閣の財務相でもあるショルツ氏に対する批判を避けていた。しかし、ラシェット氏の劣勢が強まる中「SPDは左翼党との連合を否定していない」と批判を強めている。東独育ちのメルメル首相にとって旧東独共産党を含む左翼党は、NATOを脱退してロシアと同盟すべきという主張であり到底受けいれられるものではない。

 緑の党も40歳のベアロック共同党首が人気を博して、一時政党支持率でCDS/CDUを抜いてトップに躍り出たこともある。だが、ベアロック氏の著書の盗作疑惑や経歴詐称などが明らかになって最近の支持率は伸び悩んでいるが、それでも16%と第三党の位置を占めている。

 昨年から今年初めにかけてCDU/CSUが35~40%の範囲で圧倒的な支持率を得ていた時には、緑の党との「黒・緑」連合が有力視されていた。しかし、いまやCDU/CSU が20%の支持率しかないため、緑の党との連立だけでは議席過半数に足りない。

 いずれにしても、まだ議会選挙の行方も混とんとしているうえ、政党間の連立の組み合わせの数、可能性も戦後最多と言われている。メルケル政権が偉大であっただけに、それとの比較でだれが首相になっても「指導力低下」の烙印を押されがちとなろう。

 しかし、国内にあってはコロナ危機の克服、気候変動問題への対応、遅れているデジタル化への対応といった難問が待ち受け、対外的にも引き続きフランスとともにEUの中心勢力として期待されるほか、中国、ロシアなど専制国家との関係を模索していかねばならない、などドイツ新政権の課題は尽きない。
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