10月の習近平国家主席の訪問で中国製原発の英国での採用が正式に決まった。技術力もモラルも怪しげな中国企業が関与するプロジェクトの先行きを危ぶむ声は高まり、原発建設予定地周辺では住民の反対運動が早くも盛り上がっている。おまけに「2030年までに8基の新炉建設」という英政府の計画は「撤退」の歴史で彩られており、エネルギー業界では中国企業が「ババをつかまされた」との見方も広がっている。
中国企業の関与が決まった英国の原発プロジェクトは3つ。最初は南西部サマセット州の「ヒンクリー・ポイント原発C計画」。出力170万kw級の仏アレバ製EPR(欧州加圧水型原子炉)2基を2025年稼働予定で建設する。総建設費は245億ポンド(約4兆5600億円)で、第1期分の投資額として180億ポンド(約3兆3500億円)を見込んでおり、このうち33.5%に相当する60億ポンドを中国広核集団(CGN)が出資する。
2つめは東部サフォーク州の「サイズウェルC原発計画」。やはり出力170万kw級のEPR2基を建設する。当初1号機は2020年、2号機は22年の運転開始予定だったが、現在は建設コストなどを含め「白紙」で、関係者の間では「スケジュールは7〜8年遅れる見通し」といわれている。このサイズウェルにCGNが20%出資することが今回決まった。
そして、3つめが南東部エセックス州の「ブラッドウェル原発B計画」。ここでは「華龍1号(HPR1000)」と呼ばれる中国製の最新型原子炉の採用が決まった。「華龍1号」は旧仏フラマトム(現アレバNP)の技術をベースにCGNと中国核工業集団(CNNC)が共同開発した中小型PWR(加圧水型原子炉)で出力は100万kw級。
今年4月にパキスタンでの5基建設を決めるなど、中国政府は原発輸出の主力製品とする考え。1基あたりの建設費は30億ドル(約3600億円)と最低でも50億ドル(約6000億円)とされるEPRなど欧米製新型炉より低コストに抑えている。この「華龍1号」を納めるブラッドウェル原発B計画ではCGNが66.5%出資する。
10月21日、習近平とともに3つの原発プロジェクトに対する中国の巨額の投資計画を発表したキャメロン英首相は「歴史的な契約だ」と自画自賛したが、それも無理はない。3つとも自国はじめ欧州企業がこぞって逃げ出した〝ジャンク(くず)・プロジェクト〟だったからだ。