2017年は国際情勢が塗り替わる波乱の年となるだろう。最大の震源地は覇権国、米国の大統領に1月20日に就任するトランプ氏だ。
台湾海峡危機再来の不安が高まっている。蔡台湾総統は年末の会見でトランプ氏が「ひとつの中国」を認めない、言い換えれば台湾独立を支援する姿勢を見せていることに触れ、中国が台湾に対して軍事的な威嚇に乗り出すリスクを指摘している。
台湾総統は新年早々に南米訪問に向かう。その前後に米国のヒューストンやサンフランシスコを経由すると発表している。台湾では、トランプ氏やトランプ新政権の関係者と接触するのではないかとの観測が流れている。
中国はトランプ氏が台湾総統との電話会談したことに神経質になっている。人民解放軍を最大の支持勢力とする習主席が、ひとつの中国を踏みにじるような動きを米国が続けるなら、放置できない。台湾総統が指摘するような台湾海峡危機の再来、軍事的な中台緊張も否定できない。
トランプ新政権は対ロ政策でも不安定だ。オバマ政権は米大統領選に対するロシアのサイバー攻撃に対する報復として35人のロシア外交官の国外追放を決めた。これに反発したロシア外交当局がやはり35人の米国外交官の追放を進言したがプーチン大統領は却下した。トランプ氏は対米融和策をとったプーチン大統領を称賛した。
トランプ、プーチンの関係は、新しい米ロ関係の糸口にもみえる。だが、オバマ政権を支えてきた国務省やCIAの官僚が政権移行期に新政権の対ロ政策に水を差す形で、介入しているのは異常だ。
すでに共和党の有力議員、マケイン上院議員もサイバー攻撃問題を議会で取り上げる構えを見せている。新政権に移行後も、トランプ氏が施行する対ロ融和策に、根強い反発が待っている。
トランプ次期大統領はサイバー攻撃問題で、今週中にもCIA幹部から報告を受けると表明している。しかし、トランプ氏は大統領選の直後からCIAからの定期ブリーフィングの回数を減らし、遠ざけてきた。
CIAや国務省はトランプ氏の国際問題での「暴走」を警戒している。対ロ政策や対イスラエル政策をめぐるワシントンの官僚群とトランプ新政権のあつれきの火種はつきない。これは、新政権に移行し幹部を入れ替えただけでは収まらないだろう。
トランプ新政権の布陣をみると、この政権がビジネスマンと軍人OBに依存し、ワシントン人脈と距離を置いているのがわかる。外交関係の変更を主導しそうなのは軍人OBで、いずれ現実感のあるビジネスマンが歯止めをかけるとの見方もある。
しかし、いったん回りだした外交政策を「修正」すれば、新政権の失点にもつながりかねない。トランプ外交は、新政権のアキレス腱になりかねない。
トランプ外交の波高し |
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2017年の波乱要因に
公開日:
(ワールド)
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土屋 直也(ニュースソクラ編集長)
日本経済新聞社でロンドンとニューヨークの特派員を経験。NY時代には2001年9月11日の同時多発テロに遭遇。日本では主にバブル後の金融システム問題を日銀クラブキャップとして担当。バブル崩壊の起点となった1991年の損失補てん問題で「損失補てん先リスト」をスクープし、新聞協会賞を受賞。2014年、日本経済新聞社を退職、ニュースソクラを創設
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